自社の科学者による研究で1970年代から気候変動の深刻な影響を知っていたにもかかわらず、気候変動対策を妨害するために数十年にわたって気候科学への疑惑を投げかけるキャンペーンを展開してきた、米石油大手エクソンモービル社の情報隠蔽疑惑については、すでにニューヨーク州とカリフォルニア州が独自の捜査を開始していますが、今回、マサチューセッツ、イリノイ、ニューメキシコ、オレゴン、ワシントンなども加わり、19の州に米領ヴァージン諸島を加えた20の州と地域が捜査をすることになったと共同会見で発表しました。
アメリカでは州によって法律が異なるため、共同で捜査にあたることはないようですが、エクソンモービル社をはじめとする石油産業とエネルギー産業が短期的な利益を追求するために、気候変動の深刻さを知りながら嘘の情報を市民や投資家に流すなどの詐欺行為がなかったかどうかを、それぞれの州の法律に照らして捜査するそうです。
エクソンモービル社が気候変動の深刻さを自社の科学者に警告されながら、それを無視して嘘の情報で温暖化対策を妨害してきたことや、保守系シンクタンクに多額の寄付を行い、連邦や州の議員に気候変動関連法案で自社に有利になるようロビー活動を行ってきたことはインサイド・クライメートニュースやロサンゼルスタイムズ紙、研究論文などで明らかにされています。
また、石油産業のロビー活動を監視している非営利団体の調査によると、1998年から2014年までのエクソンモービル社による保守系シンクタンクへの資金援助の合計は3000万ドル(現在のレートで約34億円)を上回っています。
今回、各州と地域の検事総長はそれらの行為の裏付けと影響を徹底的に捜査することになると述べています。
エクソンモービル社は検事総長らの会見を受け、捜査は極めて不条理であり、事実無根で政治的動機に基づくものだと非難し、法的措置も辞さないと声明を発表しています。
合計20の州と地域の検事総長(さらに増える可能性もあるとのこと)がどのように連携するのかなど、具体的な内容の発表にまでは至らず、共同で決意を表明した形ですが、エクソンモービル社や石油産業が起訴されて有罪判決を受けるようなことがあれば、企業や産業による過去最大級の詐欺犯罪となるため、捜査の行方が注目されます。
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【参照】
Climate Fraud Investigation of Exxon Draws Attention of 18 Attorneys General|Inside Climate News
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