2年連続で世界平均気温が観測史上最高を更新し、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では200ヶ国近くが「パリ協定」に合意するなど、気候変動関連の大きな出来事が続いたにもかかわらず、2015年の米主要メディアによる気候変動関連トピックの放送時間が2014年よりも減少したというレポートを以前に取り上げましたが、その報告をした米メディア報道監視団体「メディア・マターズ(Media Matters)」が、CNNが気候変動に関する話題を放送する時間よりも、石油産業による広告を流している時間の方が約5倍長いというレポートを発表しました。
メディア・マターズは、2015年が観測史上最も暑い年になったことを米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気局(NOAA)が発表した直後の1週間(1月20日~1月26日)と、2月が観測史上最も異常に暖かい月になったと同機関が発表した直後の1週間(3月17日~3月23日)における、CNNによる気候変動関連のニュースの放送時間と、石油産業の広告を流した時間の長さを比較した結果、圧倒的に石油産業の広告を放送した時間の方が長かったことが判明しました。
グレーが気候変動関連の放送時間、赤が化石燃料関連の広告の放送時間(単位: 分)
Credit: Media Matters
まず、NASAとNOAAが2015年が観測史上最も暑い年だったと発表したことに関連するニュースは、1月20日から1月26日までの1週間でわずか57秒だったのに対し、米国石油協会による化石燃料のCMを13分半放映しました。
次に、2月の平均気温の平年との偏差が過去のどの月よりも大きくなり、観測史上最も異常に暖かい月になった(NASA/NOAA)ことに関するニュースは、3月17日から3月23日までの1週間で4分でしたが、同期間に流した石油産業のCMは10分でした。
これらを合わせて比較すると、地球規模の深刻な問題である気候変動に関するニュースの約5倍の時間を、気候変動の原因である石油産業のCMに割いていることになります。
また、CNNは米国石油協会による化石燃料のCMだけでなく、エクソンモービル社と共に長年にわたり数十億円規模の資金を投入して気候変動懐疑論を拡散させ、政治献金によって連邦と地方議員に影響を与え気候変動対策を妨害してきた石油化学最大手であるコーク産業のCMを同期間に10回以上流すなど、社会問題を取り扱うニュース専門局としての倫理観が問われるところです。
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