産業革命前からの気温上昇を1.5℃/2℃未満に抑えるためにはどうすればいいの?

  ここまで『産業革命前からこれまでの気温上昇は何度なの?1.5℃にどれくらい迫ってるの?』と『炭素収支が1.5℃と2℃の壁を超えるのはいつ?』で、産業革命前から何度気温が上昇しているのか、そして2100年までの気温上昇を産業革命前比で1.5℃と2℃未満に抑えるのを困難にする二酸化炭素排出量の壁を超えるのはいつ頃になるのかについて触れました。   今年7月までの時点で1890年からの気温上昇は…

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炭素収支が1.5℃と2℃の壁を超えるのはいつ?

  『産業革命前からこれまでの気温上昇は何度なの?1.5℃にどれくらい迫ってるの?』で、世界平均気温が19世紀末から現在までに何度上昇しているのかを、米航空宇宙局(NASA)、米海洋大気局(NOAA)、そして日本の気象庁のデータを元に検証したところ、仮に今後数年間の気温が今年より低くなったとしても、現在の気温上昇ペースから見て2030年代半ばには1.5℃の壁を超えるのではないかという結論に至りま…

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産業革命前からこれまでの気温上昇は何度なの?1.5℃にどれくらい迫ってるの?

  『人為的温暖化はこれまで考えられていたよりも早く始まっていたという研究結果』で触れた、2100年までの気温上昇の目標である「産業革命前と比較して2℃未満、1.5℃未満」という表現の中の「産業革命前」は、基本的に1880年以降に温度計による観測が始まる以前の時代を指します。上でリンクした研究結果では、産業革命が始まった18世紀半ばから19世紀半ばまでの間に、温室効果ガスによって気温の上昇も始ま…

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1850年以降の気温と二酸化炭素濃度&炭素収支の変化をスパイラルGIFアニメーションで見てみましょう

  約3ヶ月前に英レディング大学のエド・ホウキンス氏が作成した世界平均気温のスパイラルGIFアニメーショングラフは、折れ線グラフや棒グラフで気温の変化を視覚化していたこれまでの常識を覆すビジュアライゼーション方法で、多くの気候科学者たちが衝撃を受けました。   もう一度ここで振り返ってみましょう。 英気象庁HadCRUT4.4による世界平均気温の偏差(基準年は1850年~1900年)Cred…

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1850年から2100年までの気温上昇をスパイラルのGIFアニメーションで見てみましょう

  以前、1850年以降の世界平均気温を従来型の折れ線グラフや棒グラフではなく、GIFアニメーションを用いてビジュアルに訴えたスパイラルグラフ(下の画像を参照)を紹介しました。   英レディング大学の気候科学者、エド・ホウキンス氏によって作成されたこのスパイラルグラフを見た米国地質調査所(USGS)のジェイ・アルダー氏は、気候モデルによる2100年までの気温上昇をこのグラフで表そうと思い立…

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1850年以降の気温上昇をスパイラルのGIFアニメーショングラフで見てみましょう

  19世紀後半以降の世界の気温の変化を表すグラフといえば、ある年から直近の年や月までの平均気温の偏差の折れ線グラフと、特定の年の1月から12月までの偏差を重ね合わせた折れ線グラフが主流です。   前者はこれです。 Credit: Met Office   上のグラフは、1850年から2015年までの英気象庁のHadCRUT、米海洋大気局(NOAA)、米航空宇宙局(NASA)のGISSデー…

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ラニーニャ現象って何?エルニーニョが終わると必ずラニーニャが始まるの?どれくらい強くなるの?

  2015年後半から2016年の3月まで、各月の世界平均気温が観測史上最高を記録する手助けをしてきた過去最強レベルのエルニーニョ現象がようやく終息に向かっています(この記事を書いているのが4月なので4月以降の世界平均気温も引き続き観測史上最高になる可能性はあります。また、エルニーニョは2015年の観測史上最高の世界平均気温と、2016年の1月から3月までが観測史上最も異常に暑い3ヶ月になった要…

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北極の多年氷(海氷)が激減

  北極の海氷面積が長期的に減少傾向であることについては、比較的頻繁に話題になります。最近では、2月の海氷面積が観測史上最小を記録したことをこのブログでも取り上げたばかりです。   また、以前に海氷面積の話題で氷齢について少し触れたことがあります。   北極の海氷には、冬の間に凍って、夏を越すことなくとけてしまう氷と、1回以上の夏を越して複数年を経過した氷(多年氷)があります。当然のことです…

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北極の温暖化と中緯度地域における極端な気象現象の関係

  近年は、アメリカ北東部や日本などの中緯度地域が、冬の嵐をもたらす大寒波に見舞われるようになりました。今回の冬も、米北東部にはすでに二度の寒波が襲来していますし、日本も九州南部で積雪が観測されています。   『【よくある間違い】寒波や大雪は温暖化していない証拠』で述べた通り、これは寒冷化しているから起こっているのではなく、逆に温暖化が進むことによってこのような気象現象が起こりやすくなっている…

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気温が低い時間ほど温暖化が速く進む

  2回に渡って、気候変動による気温上昇の傾向としてよく見られる「気温の低い場所ほど温暖化が速く進む」「気温の低い季節ほど温暖化が速く進む」というトピックを取り上げてきましたが、最後は「気温の低い時間ほど温暖化が速く進む」傾向について書きたいと思います。   このトピックは以前にも触れたことがありますが、今回は違うグラフを用いて説明します。 1900年から2015年までの米本土48州(アラス…

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気温が低い季節ほど温暖化が速く進む

  前回は、北極を例に挙げ、基本的に「気温が低い場所ほど温暖化は速く進む」という話をしました。今回は、「気温が低い季節ほど温暖化が速い」という話です。これも前回と同じく、気温が上昇傾向にあるときは、基本的に大半の場所で当てはまるということで、すべてのケースで同じ現象が見られるわけではありません。 1950年から2014年までの季節ごと(緑の破線が春、赤線が夏、オレンジの線が秋、青線が冬)の世界…

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気温が低い場所ほど温暖化は速く進む

  地球が温暖化すると様々な場所でいろいろなサインが現れるという記事を以前に書いたことがあります。気温に関する現象としては、「地表と海上の気温が上昇」「対流圏の気温が上昇」というものがありました。   それとは別に、気温上昇の傾向として大半のケースで当てはまる傾向があります。気温の低い「場所」ほど温暖化が速く進む気温の低い「季節」ほど温暖化が速く進む気温の低い「時間」ほど温暖化が速く進む  す…

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今すぐ二酸化炭素排出量をゼロにしても、世界の平均気温はあと0.66℃上昇する

  AFPのCOP21関連コラムに『たとえクリスマス前にCO2を排出するすべての装置の電源を切ったとしても、さらに0.6度の上昇が確実視されている。科学者たちはこれを「既定の温暖化」と呼んでいる。』という記述があったので、この「既定の温暖化(committed warming)」について検証してみましょう。   「既定の温暖化」は、ジェームズ・ハンセン氏の研究論文が根拠になっており、すでに大気…

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地球温暖化の原因は何?

  気候変動による地球温暖化の原因の大半が、人間活動によって排出される二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスであることは、すでに気候科学者間でコンセンサスを得ているのですが、それでもまだ「太陽活動が原因だ」とか「ここ15年以上温暖化していない」とか「もう氷河期に入ってるから」などと言い張る人は後を絶ちません。   何が世界を温暖化させているのか?という、インタラクティブグラフを用いて地球温暖…

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太平洋十年規模振動が温暖化を再加速させる可能性

  2014年は観測史上最高の世界平均気温を記録し、99.999%の確率で今年(2015年)の世界平均気温は昨年を上回ると予測されており、さらに、来年(2016年)は95%以上の確率で今年の平均気温を上回ると言われています。   今年の平均気温の上昇の大きな原因はエルニーニョ現象であると伝えるメディアが多い印象を受けますが、バックグラウンドで進んでいる温暖化の方が大きな要因であるという分析結果…

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地球温暖化「ハイエタス」は本当か?

  地球温暖化の「ハイエタス」について記事を書きましたが、近年はこの「ハイエタス」に関する研究結果が相次いで発表されるようになりました。   主な研究結果では、太平洋や大西洋の海水が熱を取り込んだため、気温上昇が鈍化しているとするものや、統計学的に見れば「ハイエタス」と呼べるような気温上昇の停滞は存在しないとするもの、短期的な変動は過去にも起こっており、「ハイエタス」と呼ばれているものはよくあ…

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気温上昇を2℃以内に抑える条件

注)この記事は訂正/編集されています。   フランスのパリで「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」が始まりました。これから2週間、活発な議論が交わされる中で、ニュースメディア等で「2℃」という言葉が頻繁に出てくると思います。   以前になぜ気温上昇を2℃以内に抑えなければならないのか、気温が2℃上昇するとどうなるのかについての記事を書きましたが、今回は2100年までの気温上…

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地球温暖化「ハイエタス」って何?

  ここ数年、地球温暖化に懐疑的な人たちが「ハイエタス(停滞現象)」という言葉を使うことが多くなりました。最も多い主張は、「1998年以降、温暖化が止まっている」というものです。   この主張はいったい何が根拠なのでしょうか?そして、これは科学的に正しい主張なのでしょうか?   この主張が声高に叫ばれるようになったのは、2013年に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評…

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2010年以降の米本土の干ばつを30秒で見てみましょう

  エルニーニョが史上最強規模まで発達し、ほぼ地球全体が記録的な暖かさになっていますが、その影響でカリフォルニアを始めとする米西部の州も例外ではなく、観測史上最も暖かい年になるのはほぼ間違いありません。   気候変動による平均気温の上昇や、エルニーニョ現象の後に起こるラニーニャ現象(エルニーニョとは逆の現象で、赤道太平洋東岸の海水温が通常よりも低くなる)の影響を受けて、米西部や南西部、グレート…

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なぜ日毎の平均最高気温よりも、平均最低気温の上昇する速度の方が速いのか?

  アメリカの2015年10月の気候レポートについての記事で、10月の米本土48州の平均気温が史上15番目だったのに対し、最低気温の平均は観測史上4番目に高く、日没以降の気温が下がらない傾向が続いていると書きました。   これは、日中の最高気温よりも、夜中の最低気温の方が上昇傾向にあることを意味します。 ・10月の平均最高気温 ・10月の平均最低気温   上のふたつの図を比較すれば、最高…

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