イギリスが2025年までに石炭火力発電を全廃へ

  「国連気候変動パリ会議(COP21)」の開催が迫る中、気候変動関連の様々な動きが活発になってきています。「いつも活発に動いたらええやん」とツッコミを入れたくなるところですが、政治が絡み、かつ世界で最も利益を生み出している化石燃料産業の既得権益に直結する改革を行うとなると、産業側の抵抗が大きく、どうしても動きが鈍くなってしまいます。

  国際的な気候変動対策の動きがどれくらい鈍いかというと、京都議定書以降、何も決まっていないと言っても過言ではないくらいスローなのです。京都議定書って、1997年の「第3回気候変動枠組条約締約国会議(地球温暖化防止京都会議、COP3)」で採択された気候変動枠組条約の議定書で、それからもう18年経過しているんです。気候変動の深刻な影響を最も受ける国や地域からすれば、「何やっとんねん」としか言いようがないはずです。

  で、そのCOP21を前に、イギリス政府が2025年までに石炭火力発電を全廃すると発表しました。全廃の2年前、2023年からは規制を設けるそうです。

UK energy mix May to July in 2015.jpg

  上の表は、2015年4月から6月までのイギリスのエネルギーミックスです。石炭火力は、総発電量の20.5%、約5分の1を占めています。これを、あと10年でゼロにしてしまおうという計画です。イギリスの石炭火力発電所の多くが老朽化しており、それらを順次廃止しながら、他のエネルギー源へと移行していくつもりのようです。

  ここで注目したいのは、「他のエネルギー源ってなに?」というところ。石炭火力を廃止して、石炭火力よりは問題が少ない(気候変動対策として見た場合、二酸化炭素排出量を半減できる)天然ガス火力発電や、万が一事故が起こればその影響はどのエネルギーよりも深刻な核発電量を増やすようでは、前進なのか後退なのかわからないことになってしまいます。

  イギリスのアンバー・ラッドエネルギー気候変動相は、「率直に言って、イギリスのような先進経済国が、環境を汚染し、二酸化炭素を大量排出する、50年間も運転しているような石炭火力発電に依存するのは容認できません。ハッキリ言って、石炭火力に未来はありません。私たちは、21世紀にふさわしい新たなエネルギーのインフラを整えなければなりません。」という声明を出しました。

  聞かせてもらおうか、21世紀にふさわしいエネルギーミックスとやらを。と思ったら、石炭火力の代わりは、天然ガス火力発電、核発電、そして再生可能エネルギーなのだそうです。いや、天然ガスも核発電も21世紀にふさわしくないし、未来もないやんか。

  おまけに、もしも2025年までに、発電時に排出される二酸化炭素を回収して地中に貯留させる技術が開発された場合は、石炭火力発電を継続するそうです。

  石炭を含め、火力発電所からは、二酸化炭素だけではなく、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)、揮発性有機化合物(VOC)などの公害物質も排出され、ぜんそくなど気管支疾患の原因となっています。天然ガス火力発電になってもそれらの公害物質は排出されるのですが、「石炭火力よりも気候変動に寄与しない」ということでよしとされてしまうようです。

  また、天然ガスの採掘方法であるフラッキングは、イギリスやアメリカで大気汚染や水質汚染による健康被害が懸念されています。また、近年はアメリカのフラッキングによるシェールガス採掘が盛んな州で地震が頻発する要因になっているという研究結果の発表が相次いでおり、気候変動以外の環境問題が心配されます。

  核発電については、事故が起こった時の被害や社会に与える影響の深刻さはチェルノブイリや福島を見れば明らかですが、使用済み核燃料の処理方法も確立されておらず、最終処分場も決まっていない状況で、10万年単位で厳重な管理が必要な高放射性廃棄物を生み出し続けることの倫理観が問われるべきでしょう。

  石炭からフェードアウトする流れをもう止めることはできないと思われますが、先進経済諸国には、石炭以外の化石燃料からの迅速なフェードアウトと、再生可能エネルギーへの速やかな移行を実現するための野心的な政策を期待したいところです。

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